ブラック企業に勤め、心身ともに疲れ果てていた君名紀久子、24歳。復帰を求められて困っていたところ、紀久子をカッコよく助けてくれたのは、外島季多という女性で、駅前で「川原崎花店」を営んでいた。グラフィックデザイナーになるという夢を持っていた美大出身の紀久子だが、この花屋でアルバイトをすることになる。花を求めてくる様々な客、バラエティーに富んだ従業員やその友人。美しい花や花言葉に囲まれ、紀久子は自分を取り戻し、未来に向けて進もうとする。
「泰山木」――「昨日、泰山木の花をくださいましたね。・・・・・・花言葉は前途洋々」。「向日葵」――「列車にて遠く見ている向日葵は少年のふる帽子のごとし(寺山修司)、ひまわりは本数で花言葉が違う。3本は『愛の告白』だ」。「菊」――「重陽の節句に現れた幽霊。まるで菊花の約。菊の英語の花言葉は『あなたはとても素晴らしい友達』」・・・・・・。
「クリスマスローズ」――「(結婚詐欺師に騙され)泣きじゃくる百花に千尋が抱きついた。さらに馬淵先生が百花の背中に寄り添う。そんな母子三代を見て、紀久子はクリスマスローズの花言葉を思い出していた。『私の不安を和らげて』」。
「ミモザ」――「深作ミモザ園を出て20分ほど経ち、陽が沈み、辺りはすっかり暗くなっている。・・・・・・ミモザ(アカシア)の花言葉は優雅、友情、そして秘密の恋」――。「桜」――「桜並木の写真をSNSにあげる際、紀久子は桜の花言葉を毎日、添えていた。桜全般でも精神美、優美な女性、純潔とあリ、桜の種類によってもちがう。フランスの桜の花言葉は『私を忘れないで』」・・・・・・。
「スズラン」――「スズランって見れば見るほど、鈴にそっくりなんですねぇ。すずらんのリリリリリリと風に在リ。・・・・・・若いうちに自分のやりたいことに取り組まなくっちゃって・・・・・・。スズランの花言葉は『再び幸せが訪れる』」。「カーネーション」――「赤いカーネーションの花言葉は母への愛、純粋な愛、そして真実の愛」・・・・・・。
花屋さんで働くことになった紀久子の周りに爽やかな薫風が吹き渡る。