kiseki.jpg「奇跡の経済教室」シリーズの「基礎知識編」「戦略編」に続く第3弾。前著「変異する資本主義」では、「米国のバイデン政権は、過去40年にわたって支配的であった新自由主義から訣別しようとインフラ投資、研究開発投資、製造業支援、これら画期的な大型経済対策に乗り出した」「世界はシュンペーターのいう経済社会への関与に乗り出す社会主義化への変異を遂げる」「構造改革、規制緩和、競争の活発化、生産性向上という新自由主義的政策が長期停滞をもたらした。供給力の高まりではなく、今は需要の増大が同時に行われることが大切。デフレ脱却の時だ」「金融政策以上に財政政策が重要で、民間投資を減殺しないで、ばらまきではなくインフラ、技術、公共投資、医療、教育、観光などへの財政出動が大切」と強調した。今回は、「このままでは日本は財政破綻する」「財政再建」論を糾弾する。「日本政府は、バブルの崩壊、アジア通貨危機、リーマン・ショック、直近のコロナ禍の環境変化のなか、一貫して財政健全化の旗を振り続け、積極財政に転換してこなかった。こうして日本経済は衰退。一方アメリカは、主流派経済学界が、リーマン・ショック後の長期停滞を契機に、積極財政を再評価する議論を始めた」という。

「財政赤字は将来世代へのツケではない。財政赤字は、単に民間部門に通貨を供給しているだけだ。税は財源確保の手段ではない。税は通貨の価値を支えるために必要だ」「日本国債はデフォルトしない」「M M Tは、供給力という上限があるので、財政赤字は無尽蔵には膨らませられない(供給が需要に追いつかなくなり高インフレになる)」「ばらまきか否かは、財政の余地政策目的政策効果、が判断基準。財政の余地は、高インフレになるまである」「財政出動で、防災、健康・医療、防衛、環境対策、教育など政府として当然やるべき仕事をやるために、財政支出を拡大すれば、需給キャップは埋まって、経済は成長する」「積極財政とともに株主資本主義からの脱却が重要」「財政支出の伸び率と名目GDPの成長率の間にはきわめて高い相関がある」「アメリカ経済は、リーマン・ショック後、低成長・低インフレ・低金利の長期停滞に陥り、従来の主流派経済学も積極財政に転じた。サマーズらは長期停滞の原因は構造的な需要不足にあると考えた」「インフレが制御不能になったのは、戦後の日本や、ジンバブエ、第一次世界大戦後のドイツなど例外的。生産力が異常に破壊された時など」「健全財政は無意味だが、主流派経済学の人々は、積極財政を支持するとはいえ、長期的に財政の健全化させるべきと考えている。低金利・低インフレ・低成長という長期停滞の下では、積極財政が最も有効である。そして大規模な財政出動により、『政府債務/GDP』は下がり、財政はより健全化する――それは今やアメリカの主流経済学におけるコンセンサス」「財政赤字は悪いもので、財政黒字は良いものという考え方は根本的に間違っている(バブルが起きると政府は黒字化し、民間部門は赤字化する)」「コストプッシュ・インフレ対策として、政府支出の抑制や増税を用いるべきではない。アメリカの直面しているインフレは、コロナ禍が一服し需要が戻りつつある中での積極財政というデマンドプル・インフレの側面がある。現在の状況を見るとコストプッシュ・インフレの性格が強い」・・・・・。

日本はコストプッシュ・インフレどころか、長期にわたり緩やかなデフレ状況を脱していない。それこそが最重要の問題である。日米の金融政策の違いによって円安が起きているが、生活習慣病のように染み付いているデフレの底流をどう打開するか。正念場となっている。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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