学生時代から大変お世話になった土岐憲三先生の「随想集」。「あてのない旅」どころか、強固な一本の人生の軸が貫かれており、その都度遭遇した地震工学の研究者だけでない各界の人物との交差は、きわめて豊富で面白くドラマチックだ。人生とはこうして、それぞれの人生の「線」が交わり、また離れ、それが豊かさを生み出すのだという感慨に包まれた。
私自身、学生時代の研究室で土岐先生にお世話になった。本書にもある松代群発地震、阪神淡路大震災後の公述人、東日本大震災後の国交省での講演のお願い・・・・・・。小野紘一さんの研究室に伺ったこと、地震火災から文化財を護る粘り強い戦い・・・・・・。
「音楽」「オーディオ」「自動車」「映画」「裁判」「イタリア」「ユダヤ人への判官贔屓」「桂キャンパス」「人融知湧」「明智光秀と土岐」――意欲ある知識人・教養人とはこんなにも豊かな人生を歩むのか――。感動した。