sekai.jpg「物価とは何か」の前著は素晴らしかったが、直面する円安、物価高がいかなるメカニズムで起きているのか。「欧米を中心にする世界のインフレはなぜ起きているのか」「日本の円安、物価高の特殊性。日本だけが直面する危機とは?」について、専門家としてその問題の核心を徹底考察する。

「低インフレ化していた世界。パンデミックでグローバルなモノの供給が寸断され、経済が再開しても生産が回復してこない。生産がニーズに追いつかない、需要が供給を上回るアンバランスが生じ、物価上昇を引き起こしてしまった。巣ごもりを終え仕事を再開したが、労働者と消費者の行動変容が続いている。失業率とインフレ率の関係を示したフィリップス曲線に異変を生じている。今回のインフレの原因は需要の過多ではなく供給の過小にある」「日本はデフレ脱却が果たされない中、急性インフレという別の物価問題に襲われている。急性インフレと慢性デフレの同時進行、物価は上がるのに賃金は上がらないという最悪の事態の瀬戸際にいる」と言う。私も常に言っている「長期にわたる緩やかなデフレ」を脱却できないなか、外からの物価高に苦悶しているわけだ。「世界は、今まさに、パンデミック後の『新たな価格体系』に向けて移行中」と指摘、「感染さえ収束すれば経済は元に戻る、インフレは一過性だという見方は違う」「現在進行中の世界インフレは主に供給要因によるものであり、その背後には消費者、労働者、企業の行動変容がある。これらの行動変容はパンデミック終盤の現在でも色濃く残っており、今後もすぐには消えそうもない。パンデミックの『後遺症』が引き起こすインフレだ」と言う。

そこで日本――物価高と騒ぐが、他国と比較すれば圧倒的に低いインフレ率であり、危険な水準とは言い難い状況にある。むしろ問題は「物価が上がらない国」ということだ。問題は「デフレという慢性病」と「急性インフレ」に重なって襲われているということ。米国は急性インフレだけなのでその治療たる金融引き締めをすれば良い(金融引き締めは需要に働きかけるもので、今回の供給不足のインフレには直接働きかけない。一時凌ぎができても景気後退と失業率増大になるが----)。日本はそれをやれば、急性インフレは癒しても慢性デフレをさらに悪化させてしまうのだ。「日本は物価の上がらない国で、値上げを許さない人々。『値上げ嫌い』と『価格据え置き慣行』があり、社会に沁み付いている」のだ。

しかし、今までと違ってデフレ脱却に最も重要な「インフレ予想」がパンデミックを経て、「低すぎるインフレ予想・値上げ嫌い・価格据え置き慣行という日本のノルムを構成するいくつかの要素に変化の兆しが現れている」とする。スタグフレーションの到来とせず、慢性デフレからの脱却に進むチャンス到来であり、企業が賃上げに前向きに取り組む、凍りついた賃金というハードルを越える時だと言う。そして「日本版賃金・物価スパイラル」を解消し、「賃金解凍スパイラル」「慢性デフレからの脱却」の実現に向けての意欲と行動を促している。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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