naokisyou.jpg愛、どこまでも続く愛、誰人も寄せ付けないあまりにも切ない愛・・・・・・。「けっして揺らがない大きな理の中にわたしたちは在り、それぞれの懐かしい人影と確かな約束を交わしている。群青と薔薇色に染まった空に、いつの間にか光る星がひとつ瞬いていた。同じ星がわたしの手の中にもある」・・・・・・。「流浪の月」は月だが、今回は宇宙に輝く星とのつながり。読んでいる途中、今年のノーベル物理学賞の「量子もつれ」を思った。

風光明媚な瀬戸内の島、それはまた一日で噂が広がってしまう小さな世界だ。高校生の井上暁海と青埜櫂。暁海は、父親が他の女のもとに行ってしまい、怒りと憂鬱に塞ぎ込む母親と2人で住む。櫂は男なしでは生きられない自由奔放な母の恋愛に振り回され、京都から男を求めて島に来た母と暮らす。心に孤独と欠落を抱えたニ人は互いに惹かれあっていく。櫂は、漫画や小説を投稿するサイトで久住尚人と知り合い、櫂が小説を、尚人はイラストを描き、その投稿作品が青年誌の優秀賞を獲ったりした。そして二人は卒業、櫂は東京へ、暁海は島に残る。遠距離恋愛だ。そのうちに櫂は大成功して有頂天になるが、尚人の私生活があらぬことで週刊誌に上げられ、一気に凋落する。どんな状況にあっても、二人が思うのは暁海のこと、櫂のことだった。

「ぼくの過去は石を投げられる類のものです。でもぼくは後悔していない。・・・・・・ぼくたちは生きる権利がある。だからきみももう捨ててしまいなさい。もしくは選びなさい」「わたしはなにを捨てて、なにを選べばいいのだろう。親、子供、配偶者、恋人、友人、ペット、仕事、あるいは形のない尊厳、価値観、誰かの正義。すべて捨ててもいいし、すべて抱えてもいい。自由」「わたしは愛する男のために人生を誤りたい。わたしはきっと愚かなのだろう。なのにこの清々しさはなんだろう」「わたしは世界を救えるスーパーマンではない。けれどこのつらさはわたしが選んだものだ。櫂とわたしの小さな世界を、わたし自身が守ろうと決めたのだ。自分がなにに属するかを決める自由」・・・・・・。この世界には、生きることの不自由さが充満している。その不自由さを突き抜け、自らの人生を自ら決め、自ら選ぶ。自らの人生は自らが、自らを生きるしかないのだ。凄まじく清々しいいいやつ同士の恋愛小説だが、今の社会を抉っている。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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