tyouatu.jpg46億年前、地球が誕生し、38億年前からの生物の全歴史をエキサイティングに描き出し、はるか未来のサピエンスの終末、全生物の絶滅までを一気に示す凄まじい著作。「人類の遺産はどうだろう。地球上の生命の長さに照らし合わせると、ほとんど無に等しい。あらゆる戦争、文学、王侯貴族、独裁者、喜び、苦しみ、愛、夢、功績など、激しくも短い人類の歴史は、未来の堆積岩の中に数ミリメートル程度の層を残すだけで、それも侵食されて塵となり、海の底に沈むだけ」「人類の歴史は、わずか一段落を占めるに過ぎない」――宇宙のなかの地球、地球の上の生物、おびただしい生物の進化と絶滅。人間存在と生命ヘの畏敬の世界に引き込まれる。

地球は生きている。大陸は何度も大きく移動・分裂し、小惑星の衝突があり(約6,600万年前、恐竜の世界は突然終わる)、火山の壊滅的な噴火(7万4,000年前のスマトラ島のトバ山の噴火、南アフリカの海岸にまで瓦礫が注いだ)に見舞われた。その都度、寒い氷期に覆われ、生物は大量絶滅していく。「ビッグファイブ」と呼ばれる5度の大量絶滅を経て、奇跡的に生き残ったものが生命をつないできたのだ。

最古のヒト族は、およそ700万年前の中新世後期に出現した。その一つが西アフリカのチャド湖畔のサヘラントロプス・チャデンシス。直立歩行で木にも登り生活した。そして私たちとよく似ていて、ニ本脚、火を使い、美しい道具を制作する「ホモ・エレクトゥス」が誕生、200万年前までには大陸中に広まり、北ヨーロッパや島だった東南アジアに進出した。私たちに似ていたが、「捕食者の狡猾な眼差しだけで当惑するほど非人間的」だった。「死後の世界という概念がなかった」と言う。約43万年前、スペイン北部に登場したのがネアンデルタール人。「思いやりがあり、思慮深かった。そして彼らは死者を埋葬した」のだが、霊性を追い求めていたのだ。30万年前、最初のネアンデルタール人がヨーロッパの凍てつく寒さに適応していた頃、アフリカに新しいホモ族が出現、これがホモ・サピエンスだ。25万年ほど前には、ヨーロッパに入ろうとしたホモ・サピエンスは、ネアンデルタール人に撃退されたが、4万年前までには、この氷河時代の覇者は、ほぼ絶滅した。しかし、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は交配していたのだ。2022年のノーベル生理学・医学賞でも示されたのは興味深い。

本書はこれからの未来についても語っている。ホモ・サピエンスは絶滅を免れない。それは地球の変動によるものではあるが、まだ「第6の大量絶滅」の時ではない。「ホモ・サピエンスが特別な理由は何か。それは、物事の仕組みの中での自分の位置を意識するようになった、唯一の種だと思われるから。自分たちが世界に与えているダメージを自覚し、それ故、ダメージを軽減するための手段を講じることにしたのだ」「絶望してはいけない。地球は存在し、生命はまだ生きている」と言い、「一族の運命を少しでも明るくしようとする、ちっちゃな動物の儚い努力に、あきらめず、協力しなくてはいけないという衝動にかられる」と言うのだ。訳がリズミカルでとても良い。また絶滅した生物のイラストも挿入されていて楽しい。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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