あの90年 代前半の政治改革論議。小選挙区制に比重が置かれたのは、「政党中心、政策中心の選挙制度が大切」「政権交代のある二大政党制」「自民党における派閥争 い、カネをめぐっての中選挙区制への忌避」そして「アメリカやイギリスが持つ二大政党制こそがデモクラシーの王道である」などという強力な刷り込みと思い 込みがあったと指摘する。
「単 峰型社会では二大政党のイデオロギーや政策は収斂傾向をもつ」「だからこそ、両端の社会層はコストを払うことになり、地域の切実な課題に、政治は応え切れ ない」「選挙は政策論争でなく、政権選択のゲームと化す」「政党は首尾一貫した綱領などイデオロギーに支えられるのではなく、政権奪取ゲームを繰り広げ る。政策も政権政党への批判を軸にして組み立てがちになる。また対立的政策を出す誘惑にかられもする」「政党は人気取りに邁進し、世論調査に振り回され劇 場政治がつくり上げられる」「連立政権は不安定といわれたが、連立政権と内閣の安定性とは関係ない」――。
吉 田さんは、世界の政党と選挙制度を歴史的、現実的に分析しつつ、「多極共存型デモクラシー」や「闘技デモクラシー」を紹介する。「日本政治に欠けているの は"強いリーダーシップ"や"政策本位の政治"などではなく、"政治は自分たちのためにあるもの"という感覚なのではないか」とも言っている。今、選挙制 度のみならず、政治全体の改革が求められる。