「文藝春秋」の2014年8月号以降の巻頭随筆と、その他の特集記事「最先端技術と10年後の『日本』」「ノーベル賞興国論」の2本。ずっと立花隆さんの本を読んできたが、正確さ、緻密さ、深さ、加えて真摯さや境地を感じさせるものとしてスッと心に入ってくる。日本人を励ましてくれているかのようだ。
「日本が抱える最大の弱点とは何か。3つに要約できる。人口減、高齢化、そして夢のない社会。いいかえれば日本が"悲観社会"になっていることだ」といい、「乗り越えることができる」と具体的に例示。「この世の中は、悲観論者は自分の予測通り失敗して没落し、楽観論者は自分の予測通り成功していくものです。楽観主義でいきましょう」と結んでいる。
その時々の発言は、行動して探り深めた「知」に満ちている。「生と死に学ぶ」「歴史と語らう」「科学を究める」「戦争から考える」「政治と対峙する」「未来を描く」にまとめられているが、政治の情なさと科学技術の探求・進展への指摘は際立っている。