大手居酒屋チェーン「山背」に勤め、店長となって頑張っていた藤井健介が飛び降り自殺をする。「山背」はすさまじいブラック企業。休めない、過重労働・残業、極度の睡眠不足で通常の判断すらできない。赤字を出すと店長の落ち度となり、本社に呼び出されてリンチとしか呼べない吊るし上げ。「健ちゃん、チィ」と呼び合う恋人の伊東千秋は、突然の死に呆然自失、悲しみにくれる。ラインに残された最後の言葉が「ごめん」の一言。「私、最後の最後に、健ちゃんに言ってしまったんです。頑張って。健ちゃんだったら大丈夫。乗り越えられるよ」・・・・・・。千秋は自分を責める。
「山背」のあまりにも心ない対応に、千秋と息子を失った両親は激怒し、立ち上がる。そして、しだいに「山背」に働いた者も味方についていく。息をするのも苦しいほどの緊迫感、憤り、真剣さが全編を貫く。一気でないと読めない。健介・千秋が歌った奥田民生の「風は西から」。「風は西から強くなっていく・・・・・・。魂で走れ 明日はきっといいぜ 未来はきっといいぜ・・・・・・」。