1968年12月10日、東京府中市で起きた三億円強奪事件。50年が経過し、犯人が告白文を発表する、という小説。
当時、大学2年だった実行犯の白田。計画を共に策謀する昔からの友人・省吾。そして恋人の橋本京子、三神千晶。60年安保が過ぎ、あの頃は再び大学は学生運動の渦中にあった。日本も1964年の東京オリンピックを終え、高度成長の勢いとともに、新しく迎える社会への希望と不安が交錯していた。若者はエネルギーもあり、"青春"を模索していた。
そんななか、「生きる証」「命を賭けても友情を貫こうとした意思」「奔流となる社会のなかでかき消される個人、それゆえの自らの決断」――府中三億円事件をそのように"金銭欲"ではないと想定して描いたもの。意表をついた"小説"。