船曳さんの100歳となった母親が、米寿を過ぎたころから子供の頃からの四季おりおりの暮らし(足利の高松村)について語るようになった、それをまとめたのがこの書だ。
私の母も明治45年 生まれ、故郷の子どもの頃を思い出し、苦労ばかりしてきた父母のことを想いつつ読んだ。当時は、貧しかったことは勿論だが、生活は自然とともに、季節とと もに、家族・親戚・村の人々とともにあったことを改めて気付かされた。人間と自然しかないかのように。素朴で誠実な語りのなかで、なつかしさや悲しみだけ でなく、船曳さんが意図したかどうかはわからないが、「人生とは」「生活とは」「人が生きるということは」という根源的な問いかけが重々しく迫ってくる。
こういう本に出会えてよかった。
生活保護受給者は近年、急増。80人に1人、150万人にも及ぶ。一方、全ての人が雇用情勢の厳しさや生活苦、低い年金にさらされ、さらには不正受給者もあり、生活保護世帯への納税者の目は厳しい。地方財政の厳しさもある。
経済的、財政的視点から自立が要請されるが、生活保護受給者になるのは、まさに貧困、病気、教育(親の貧困、低学歴)、低賃金、雇用・失業、非正規労働、低年金など、日本社会の構造的問題の帰結である。たんなる経済・財政の視点のみで生活保護の問題を考えてはならない。社会に参画し、生きがいをもって人と交わるという次元からこの問題を考えないと、社会はつらいものになる。
本田さんは生活保護を、現場を丹念に歩くなかでルポし、問題の深刻さを剔り出している。そして北海道釧路市の地道な活動は、突き放されがちな生活保護受給者を、社会の中に抱きかかえようとする心の政治をみせてくれている。
「貧困をなくす新たな取り組み」という副題だ。
副題に「グーグルとメディア崩壊」とある。その通り。まさに大きくいえば人類が今、直面している社会の問題は、グーグル・ワールドと報道そして報道機関、
グーグル・ワールドと個人情報、さらに再考を余儀なくされるジョージ・オーウェルの「1984年」の社会――そうした問題だ。テレビ・新聞が消えるかどう
か、という次元を越えた、社会の本質的問題が提起されており、そのなかでの報道再生問題だ。
この本は面白い。税のプロ中のプロ、大武さん。本当にわかっている人は、やさしく語れるものだ。企画立案と税務行政の両方を担当しただけに具体的だし、日
本の地域現場や世界を駆けめぐって仕事をしているだけに、「高齢社会」「グローバル化」「資源制約時代」の3つの構造変化にどう税制をつくり直すかという
意欲があり、根源的、本質的だ。「国家の大宗は租税なり」と言われるように、国家戦略的に税を考え、骨太に再建しなければならない。
アジアの時代といわれる。低迷する世界経済のなかで、上昇するのはアジアだ。後藤さんはそのアジアの「今」を直視せよという。
「人件費の安い生産拠点」「汚職・腐敗・非効率」のアジアへの先入観は捨てよ。製造業と製品輸出のアジアから、消費するアジアへと「双発の成長モデル」へ と変わった。それも富裕層・中流層・BOP(ボトム・オブ・ピラミッド、アジアで20億人の年収3000ドル未満)の三層で新しい需要を考えよ。上から目 線ではなく、協調・共栄のアジアの一員として日本がいい役割りを演じることが、日本のためにもなる――こうしたことを後藤さんは現場を見、数字をあげて活 写する。今のアジアの熱気を教えてくれている。