
「部落とは」「在日とは」「差別とは」だけでなく、テーマは多岐にわたるが、野中さんの後で伴走してきたような自分だけに、あの時、この時を振り返りつつ思いをめぐらした。辛さんは「糾弾ではなく被差別者の側の個人の努力で差別と闘う野中氏の姿勢」というが、本書の最後では2人が、角度を異にしながらも心が融け合う。
弱者の側、差別される側、困り苦しんでいる人と同苦し、身体をはって扉を開く戦いは、心に沈潜した怒りや悲しみの深さなくして成しうるものではない。自分の子どもの頃からのことを思い浮かべつつ、この10数年の闘争を振り返りつつ、一気に読んだ。