
日中というより世界をまたにかけ、アジアの独立富強に動いた梅屋。孫文、宮崎滔天、頭山満、萱野長知、そして犬養毅・・・・・・人脈もケタはずれ。財力が
あるというだけではない。困っている人を放っておけない。人助けの義侠心。それもケタはずれだ。さらに孫文が日本で行った遺言とも言うべき最後の有名な演
説――。「日本民族は、すでに一面欧米の覇道文化を取り入れると共に、他面、アジアの王道文化の本質を持っている。今後日本が世界の文化に対し、西洋覇道
の犬となるか、あるいは、東洋王道の干城となるか、それは日本国民の慎重に考慮すべきことである」。孫文の大アジア主義、民族・民権・民生の三民主
義・・・・・・。「梅屋庄吉は孫文に惚れ込んでいた」といわれるが、そうではない。アジアへの、弱者への思いあふるるなか、一緒に革命をやり、プロデュー
スしたのではないかと、筆者小坂文乃さんは書いている。小坂さんは梅屋庄吉の曾孫。あの松本楼を営む小坂家。縁は今も続いている。日中激動の1900年を
前後する約50年間の歴史は生々しい。