時は1500年台前半。北条氏の風摩小太郎、扇谷上杉氏の曽我冬之助。武田氏の山本勘助――この三人が関東の支配権をめぐって鬼神のごとき死闘を繰り広げ るが、本書はその助走。主人公は早雲庵宗瑞(後の北条早雲)が見出した逸材・小太郎。「人材は見つけるもの」といわれるが、息子・氏綱の子である千代丸の 代になっての軍配者として小太郎を育てる。20年、30年後のことを考えてだ。
軍配者とは単なる軍師ではない。占術と兵法の二つの能力を併せもつ「戦の全般に関して君主に助言する専門家」だ。当時の戦争がいかなるものであるかがよく
わかる。関東の攻防と背景が浮き彫りにされるが、早雲を「稀代の英雄と世間は呼ぶが、英雄というより仁者と呼ぶのがふさわしい」と描く。戦いではなく、民
を農民を安らかにしてこそ支持が得られることを早雲は示す。三人の好敵手は、学徒3000の最高級の学府・足利学校で学ぶ。面白い。