温かい、熱々の、口の中で跳ねるうどん。そして峠のうどん屋の前に建つ市営斎場。立ち寄る人々。厨房で1人黙って仕込みをするおじいちゃん。賢いおばあちゃん。それを手伝う孫の女子中学生の感受性。
死に直面して寡黙になる人々。
「悲しまなきゃいけない人に場所を譲ってあげよ」
「関係ないヤツにかぎってよくしゃべる」
「ひとが死ぬということに痛みを感じないおとなになってしまう」
「答えがすぐ見つかるものなんて、人生にそんなにたくさんないよ」
「自分の居場所がある人、居場所がわからない人」
「人生は出会いと別れの繰り返し」
「泣くことができない自分とは何か」
「わからないことはたくさんあるの、あっていいの、いまは」・・・・・・。
「霊柩車の運転手」「シェーのおじさん」「おくる言葉」「町医者」「ボーズ」「ヤクザのわびすけ」「柿の葉うどん」など、重松さんが日常と非日常の往復のなかに、一生懸命に生きる人たちを描く。死を前にして人は人に戻る。