
世代間格差は、現在の社会矛盾であり、怒号飛び交うはずのものだが、静かな、ものわかりのよい若者たちによって、争いが回避されているように見える。しかし、じつはより深刻な若者たちの不安、社会のなかでの不安定な立場で押しつぶされようとしている。それでは未来は暗い。
加藤さんは5つの要因を示す。
(1)人口構造の変化
(2)若者に頼った財政システム(社会保障制度の賦課方式など)
(3)日本特有の雇用慣行
(4)近視眼的な政策対応(経済・公共事業など)
(5)経済成長の鈍化
――だ。
そして雇用、年金、医療などの現状を簡潔に分析し、問題点を剔抉する。民主党の政策の欠陥が浮き彫りにされ、年金・医療・介護の現実、そして労働市場・雇用システムの変貌を分析する。社宅とは、公務員宿舎とは何か――なども読みながら考えさせる。
「若者の雇用拡大と世代間格差縮小は経済成長にあり、目前のパイの奪い合いではない」「経済成長を実施し、それと整合的な社会保障制度を構築する。それが世代間格差を縮小し、経済成長にプラスになる好循環をもたらす」――具体的方途も示す。