
明治維新後の変革期、不安定な時代。新政府に抵抗し、死に場所を求める元士族――。熊本で決起する神風達を止めようとした完四郎は逆に心をひかれ、己を省みる。
「こういう美しき者たちを・・・・・新政府はなぜに死に追いやる」
「こういう者たちが喜んで生きて行かれる国こそ本当の新しき国ではないのか」
「おれよりも偉い。・・・・・・惑わぬ心で剣を持つのは・・・・・・」
「戦が何を生む。・・・・・・大久保はまだ足りぬというのか! 西郷は不足だと言うのか! この国の大義はどこにある!」
――掴み所のない国に向けての怒り、そして底の抜け崩落感のなかにある自分自身の生に対して、「おれは・・・・・・どうすればいい」やり場のない時代が描かれている。しかし戦いはまだ続き、明治は走り出している。そんな時代のはらむ苦悩がにじみ出ている。