日本の戦後外交を動かしてきた最大の原動力は、米国に対する「追随路線」と「自主路線」のせめぎ合い、相克であった。米国の対日路線は、世界戦略の変化によって変わる――。前者は吉田茂、池田勇人、中曽根康弘......。後者は重光葵、石橋湛山、岸信介、田中角栄......。そう孫崎さんはいう。
歴史はそれほど二者にくっきりと分けてつくられるものではないことは、先頃の鳩山政権を見ても明らかだが、あえてはっきりと両者を分けて分析しているがゆえにわかりやすいし、回顧録等を駆使して、新たな視点で切り込んで分析しているがゆえに刺激的になっている。
日米安保条約がどこで誰によって調印されたか、行政協定の意味が重いのはなぜか、安保闘争とは何であったか、米軍基地はいかなる論議のなかで存続しているのか――孫崎史観は、本書ではとくに「60年安保」までを抉っている。1990年以降はむしろ「日米同盟の正体」に詳しい。