こうすればいじめを解決できる――"夜回り先生"水谷さんは、明確に示す。
今の子どもたちがいかに追い詰められているか。大人と違ってストレス発散ができない。子どもたちには閉鎖された学校と家庭しかないうえに、その二つが追い詰められる場所となった時に、もう逃げ場はない。
"いじめ"の原因は家庭や学校、地域などの社会にある。だから閉鎖された学校空間の中の問題ではない。いじめる子もいじめられる子も交替もするし、生涯の傷を負う。水谷さんは、今の子どもに暴れ回るエネルギーや気力がなくなり、「目力」がなく、自己肯定感の希薄さ、自分への自信のないことを心配している。認められたり、ほめられたりすることなく、否定、否定で育てられればたしかにそうなる。
"夜回り先生"水谷さんはずっと、「死にたい、助けて」という子どもに体当たりで相談し続けてきた。本書にもその一端、実例が紹介されている。愛情のない、実情に迫らない、本質を探ろうとしない全てに対して憤りがあふれている。
いじめ現象は「不健全な人間関係(無視や悪口)」「人権侵害(死ね、学校へ来るな)」「犯罪」の三つに分かれるのに、文科省は曖昧な定義で、学校の内に抱え込ませている。人権侵害には人権擁護局などを、犯罪には警察との連携を、学校と教員は「不健全な人間関係」を直し、できなければ"いじめ"の責任を取ること――水谷さんの主張は明確だ。
いじめにどう対処するか――。「今いじめられている君へ」「いじめに気づいている君へ」「今だれかをいじめている君へ」「すべての親へ」「学校関係者へ」「関係機関の人たちへ」「すべての人たちへ」。皆、逃げているではないか。いじめ対策は、総がかりで、踏み込んでこそできるものだ。戦ってこそ解決の道がある――そうした叫びが伝わってくる。必読の本だ。