
夫妻にとって、その人生は常にアイデンティティを考え探し、踏み固める作業を余儀なくされたこと。「振り返ってみると、外国人として日本とこの国(米国)で人生のほとんどの時間を過ごしている。国籍、祖国、母国そして故郷という言葉が法的にも心情的に一致する多数の人々の間で、漂うように少数者として生きてきた歳月であったと言えようか。その社会の周辺にいる自分を、不運であると憐れんだことはなかったが、不条理であるとの思いはあった」と語っている。「選挙ができる。投票ができる」――このことが、いかに大きな喜びなのか。見事な文章。歩んできた人生の足跡の重みが、静かに語っているだけに迫ってくる。