
大災害に備えるには科学的想像力がいる。そして危機を察知したなら間髪をおかずに実行することだ。失敗学からいえば、必ず人間は「まあ今やらなくても」「何とかなるのではないか」と安易な方向に流れるからだ。
私も繰り返し言っているが、1755年、リスボンが津波に襲われ、それがポルトガルの時代の終わりを告げたことを絶対に忘れてはならない。本書の焦点は首都直下地震。それも東日本大震災によって首都直下の地層に乱れが生じている。何度も地震が発生して、頻度を増しつつ、マグニチュード8級に至るということ。加えて、日本国債が売られ、円の価値は急落し、株は暴落する。国内の銀行、証券までが円、国債売りに走る。それを狙っている諸勢力が世界にいる。日本は壊滅する――。そうした想定を高嶋さんは、小説で描く。しかも国交省がその中心舞台となる。その首都崩壊、日本崩壊を食い止めるのが、首都移転の短期間での断行という設定だ。
首都直下型地震は必ず来る!それによって1929年をはるかに上回る世界大恐慌が起こる――それをどう食い止めるかを考えさせる。