
低賃金、長時間労働で"正社員"を使い倒すブラック企業、暴力・暴言で労働者を苦しめるモンスタークレーマー、モンスター消費者。「ブラック企業VSモンスター消費者」というより、両者は密接に関係している。
本書を読んでドクターXの米倉涼子の「いたしません」を思い浮かべた。
サービス業が拡大し、「おもてなし」「サービス」が求められる――それが、働く人の職務・範囲がはっきりしていない日本の社会(文化)のなかで雇用されると歪みが生ずる。「もてなされる」のが当然になると「モンスター消費者」の一因となり、それがまたブラック企業の「君にはいつもクレームが来る」として解雇の因にもなる。消費者は「サービス」はタダだと意識が強い一方で、企業側は「付加価値」「サービス」と称して、残業代を払うどころか、際限のない労働を消費者に提供するよう従業員に強いる。勿論、過当競争も背景にあるが、そうした「おもてなし」「サービス」の過剰要求と、日本社会の「休まない文化(欧州ではコンビニも休みをとる文化)」、さらには「命令に従順な日本人」が一体となって、働く若者を追いこんでいく。サービス業従事者の職務・範囲が定義されない雇用システムが悪循環をもたらすという。
日本人論や文化論に拡散させないで、問題は労働問題だという。体が壊れない労働時間で、休める時間を増やして、暮らせるだけの賃金を得られるベースで産業を設計しなおそう。長すぎる労働時間と、無限に広がる職務という日本の特殊性を直視し、「過労防止基本法」「最低休息期間制度」「労働契約を具体的な職務に基づくものとし、職業訓練制度、職業資格制度の充実・強化」――これらからまず始めようと、提起している。