
なつかしいZ会の機関紙に「こころの物語」と題して加地伸行先生が語った連載。利己主義、個人主義、家族主義について繰り返し、説かれる。
「個人主義者とは、自律・自立し、自己責任をもって自己決断する人のことである。一方、利己主義者は己のためにだけ行動する人である。何もだれも信じない。信じるのは、自己と金銭財物だけである。ただし個人主義的生き方はなかなか難しい」「そこでキリスト教の神(唯一最高・絶対者)が、内面的に個人主義とつながり、崩れようとするときの抑止力となっていったのである」。「こうしたキリスト教的世界と異なり、日本・朝鮮・中国という儒教的世界では、個人主義は生まれず、家族主義ひいては一族主義をすぐれた生きかたとした」。
そこで家族の思想に貫かれる無償の愛を説き示す。「無償の愛がないから他人」「日本人を変質させた"個人主義のものまね"」「他者への無償の愛、すなわち友情」「教養人(君子)であれ、知識人(小人)にはなるな」。「沈黙の宗教――儒教」「家族の思想」「論語」の大家・加地先生が易しく、繰り返し、青年たちに語っている。