あわいの力.jpg
「心の時代」の次を生きる、と副題にある。安田さんは能楽師でワキ方。「能楽師は、己の身体を駆使して舞い、身体の底から声を出して謡う。・・・・・・古来の日本語には"脳"だけではとても捉えきれない豊かな広がりと奥行き、彩りや香りがあり、身体的な感覚を使って、はじめて感じ取ることができる」「笛は師匠から弟子へと代々受け継がれた名管ですが、・・・・・・しばらくはまったく音が鳴らない。息を吹き続け何年か経つと音が鳴り始める。それも師匠そっくりの音が・・・・・・。能の謡もまったく"声が出ない"。身体という"道具"の師匠と弟子の伝授。"声が出る"ようになった瞬間を今でも鮮明に覚えている」という驚くべきことから本書は始まる。


己と他者、異界と現実、時間と空間、あっちとこっちをつなぐ間(あわい)の存在。そしてその媒介。人は身体という「あわい」を通して外の世界とつながる。現代は、「異界」と出会う場を奪われた時代だ。知識、実学、見えるもののみに奪われ、「見えないもの」を浮かび上がらせることができない世界と化している。「現代に"異界"を取り戻し、その"異界"から新しいものを生み出していくためには、"何もない""何も与えない"時間や空間をつくることが大切だ」「人生をつらくしてしまう傾向にプログラムされた現代。これこそ"心のしわざ"だ。その"心"から自由になってみてはいかが」という。


有と無、有限と無限、"からだ"と"こころ"、宇宙と我、そして祈りと呪術――世阿弥は「離見の見」として我欲、我見から離れることを示したというが、安田さんは「心がなかった時代の内臓感覚」「無限と有限をつなぐ"あわい"」「見えないものを見る力」などを開示しつつ、西行、定家、芭蕉などの境地を見せてくれる。感銘した。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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