
都市銀行トップのメガバンクに女性総合職一期生として入行した吉沢環が、女性初の本店管理職に抜擢された。その任務は利益供与や不祥事隠しの隠れ蓑にされてきた子会社の清算。しかも、背後には、経営幹部の派閥抗争があり、女性への偏見や差別が渦巻く。
「たしかに純粋にひとつの目的のために行われている仕事なんて探しても見つからないかもしれない。どんな仕事も不純な目的や割り切れないしがらみをなにがしか抱えながら進んでいる」――。清算という厳しい仕事を終え、主人公はカンボジア地雷除去のNGOに参加する。数メートル先も見えないスコールを浴び「いっそこのまま異国のスコールに身を委ねて20年の間に全身にこびりついた組織の垢をすべて洗い流してしまいたい」と思う。
仕事とは。組織の中で働くとは。女性と仕事とは。ハデなドラマ仕立てでないゆえに、その苦悩がリアルに迫ってくる。財務省現役キャリアが書いた第5回日経小説大賞受賞作。