
「いつの時代も、どこの土地でも、叔父さん的な人がいたのだと思います。世の中の常識に対して『ほんとかな?』と疑問を投げかけ、若者たちの悩みに役に立つんだか立たないんだかよくわからないアドバイスをしてむしろ混乱に陥れるような叔父さんが」――。父でもない、兄貴でもない、"おじさん"の哲学だ。
叔父さんは常識にとらわれない。時代に抗する。叔父さんはひねくれている。自分で考えている。やたらと博覧強記だ。カッとしない。ちょっと不良で、ちょっと"ええかげん"で、やさしい。叔父さんは「聴いてくれる」。叔父さんは別の次元があるのを教えてくれる。焦らず、強がらず、寛容だ。中心よりも周縁に立っている。叔父さんは好きなように生きる。既成の価値観を破壊する。
永江さんは「まじめな人はこわい」「多数派はいつも間違える」「現代の日本は他人に対して不寛容な社会になっている」などと語るが、もうそれが哲学になっている。また取り上げている人物がすごい。内田樹、高橋源一郎、橋本治、吉本隆明、花田清輝、山口昌男、生田耕作、鷲田清一、松岡正剛・・・・・・小田実、鶴見俊輔、それにソクラテス、親鸞など、錚々たる人たちだ。私よりちょっと後の昭和50年代からの時代と思想が浮かび上がってくるが、こんなに柔らかく20余人の思想・哲学を語ってくれる永江さんはすごい。面白い本。