
「平成政治史1」、岩波書店とくれば、学術書と思うが、「崩壊する55年体制」と副題にあり、ドキュメントだ。しかも、政治の現場に常にいた後藤さんが、すぐれた動体視力と皮膚感覚でとらえ、政治家の肉声が散りばめられている。「政治は一寸先が闇」というが、まさに激動の90年代。「俺は今、どこの党かと秘書に聞き」の川柳のごとき、離合集散、生々しい権力闘争の時代だ。昭和63年(1988年)12月24日、竹下内閣から本書は始まる。宇野内閣、海部内閣、宮澤内閣、細川内閣、羽田内閣、村山内閣、橋本内閣までが描かれる。私が政治への道に進んだのが1988年秋。ちょうど本書とダブる。読むうちに、1つ1つが、くっきりと映像となって蘇ってくる。当然、現場にいた私なりの解釈もあるが、肉声と全体像、政治記者としての距離感がバランスよく絶妙だ。激流というより濁流の中で、とにかく前へと泳ぐような日々だった。またそれだけに、多くの方々との人間関係にも恵まれたと思う。