
内村鑑三が「代表的日本人」で、ケネディ大統領が「尊敬する日本人政治家」としてあげた上杉鷹山(1751年~1822年)。日向高鍋藩主・秋月種美の次男で、10歳で米沢藩の第8代藩主・上杉重定の養子となる。
家康に敵対して120万石から30万石へ、さらに三代藩主・綱勝の急死によって断絶寸前で15万石に減らされた衰退の上杉を引き継いだ上杉治憲(鷹山)だが、その生涯は苦難の連続。養子、小藩の出と馬鹿にされ、寵臣の堕落、飢饉、火災、さらには幕府から課せられる手伝い普請・・・・・・。他の大名家もそうであったと思われるがとにかく財政ひっ迫、借金まみれ。米以外の漆や楮(こうぞ)、桑など殖産興業を、武士たち参加の下で生き抜こうとした。
民とともにある名君・上杉鷹山というより、寵臣をも断罪・切り捨てて進んでいく激情・苦闘の人物像を描いている。「なせば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」の名言の意味するところを知ることができた。本書では「勇をもって当たれば、何事もなせまする」と逡巡のなかで決断して進む鷹山の強さが印象深い。