
「終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか」「世界経済の大潮流」の両著の延長線上にある。
「地理的・物的空間(実物投資空間)」に見切りをつけた先進国の資本家たちは「電子・金融空間」という新たな空間をつくり、利潤極大化という資本の自己増殖を継続している。リーマン・ショックは、その無理な膨張が破裂したものだ。グローバリゼーションは「中心」と「周辺」の組み替え作業であり、「先進国(中心)と途上国(周辺)」「ウォール街(中心)と自国民(周辺)」という構造をもつ。食料価格や資源価格の高騰は、貧富の二極化、中間層の没落を引き起こす。グローバル化と格差の拡大だ。「ゼロ金利は資本主義卒業の証」「矛盾が、資本主義終焉の一歩手前まで蓄積している」「資本主義の本質は"中心・周辺"という分割にもとづいて、富やマネーを"周辺"から"蒐集"し、"中心"に集中させることだ」――。
そこでどうするか。本書の意図はそこにある。まず資本主義の暴走を食い止めて、どう"定常状態"をつくるかだ。ゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレに突入している日本は、それをアドバンテージだととらえて、人口減少に歯止めをかけ、国内での安価なエネルギー創出なども含め、"定常状態"をつくるべきだ。成長市場主義から脱却しよう、という。