
傑作「軍配者シリーズ」の富樫倫太郎さんが、「本能寺の変」に挑む。NHKのTVドラマ「黒田官兵衛」も、ちょうど今、本能寺の変にさしかかっている。
天下統一をめざした信長の暗殺計画。伊賀を焦土作戦で皆殺しにされた百地党の里村紹巴(じょうは)や文吾(石川五右衛門)の復讐。統一後は「諸国の大名から領地を取り上げ、朝廷に返上する」と信長は目論むが、朝廷の太政大臣・近衛前久らは"朝廷乗っ取り"計画と見て、暗殺計画に加わる。統一後に漢の高祖が功臣たちを次々に粛清したことを踏襲することを恐れる徳川家康、そして誰よりも羽柴秀吉。あの有岡城に幽閉された時、嫡男を処刑されようとしたことで、信長への恨みと憎しみをもつ黒田官兵衛。"朝廷乗っ取り"に反対する織田信忠、そして逡巡する明智光秀・・・・・・。
信長への恐怖で、戦々恐々となるなかで、「信長に死んでほしい」と思わぬ者はなかった。しかし、誰がやるか。どう実行するか。主殺しの汚名を他に押しつけたい。息の詰まる"陰謀"のなかで、百地党の里村紹巴が朝廷を巻き込み、さらに秀吉と官兵衛は光秀を犯人に仕立てあげる謀略をめぐらす。
全ては天正十年(1582年)六月二日になだれ込んでいく。