1948年(昭和23年)発刊されたヘレン・ミアーズ(東洋学研究、ミシガン大学等で日本社会について講義、戦後日本の労働基本法の作成に携わる)の著作。しかし日本ではGHQから翻訳が禁じられた。
あの昭和の戦争――「世界で最も凶暴で貪欲で猛々しい侵略的、拡張的な戦闘的民族という誇張された日本民族像がつくりあげられた」。しかしそれは1853年ペリー来航以来の近代日本であり、それ以前の日本はそうではなかった。日本人は欧米を先生として学んだ(それも真面目に)のであり、やがて日清戦争、日英同盟、日露戦争を経て、小「大国」になり、ついに新たな「略奪的西洋列強」になった。「最初の教育で日本は、人道主義、機会均等、人種の平等なるものは、国際法のルール同様、法的擬制にすぎないことに気付いたのだ。・・・・・・国際関係のルールとは、実は暴力と貪欲を合法化したようなものだ。基本原則の中で大国がきちんと守っているのは唯一、各国の政策立案グループが設定した"国益"だけではないか。日本はそれをしっかり実践していく」とまでいう。
テーマは「昭和の戦争とは何であったか」「あまりにもみじめで悲惨な日本人兵士と日本人」とともに、「日本が西洋列強から何を学んだか」であり、「日本人論」でもある。そして「欧米列強の思惑と戦争に突き進んだ日本」の構造的、心理的分析だ。
歴史観は風化のなかで固定化しがちだ。しかし、その時の生々しい生きざまを常に蘇らせる作業と、視点の高さ、包括性が不可欠だと思う。