
「その顔を、いつも、太陽のほうに向けていなさい。あなたは、影を見る必要などない人だから」(ヘレン・ケラー)――。
ヘレン・ケラーとアン・サリバンの物語を、明治時代の青森に移し変え、弱視をかかえた去場安(さりばあん)と三重苦の介良(けら)れんの物語として描く。それにれんの初めての幼な友だちとなる盲目の津軽三味線・人間国宝となる狼野キワが加わる。何とも言えない感動が広がり、涙した。
原初的な感覚――生きるということ、人間に備わった無限の可能性、生の肯定から噴出する愛の力、最初に教えた「祈り」、差し込む光、生きる希望・・・・・・。見えざる世界を知り、感ずるところに人生が始まり、そこを開示悟入するには師弟がいる。思考が垂直に心に迫ってくる。