
月村了衛さんの短篇集。火宅、焼相、輪廻、済度、雪娘、沙弥、勤行、化生が収録されている。警視庁に新設された特捜部SIPDは、「龍機兵」と呼ばれる最新鋭の装備を持つ突入要員の他に、刑事部、公安部などの既存の部署に属さない専従捜査員を擁している。トップダウンで創設されたがゆえに他からの反発もある。
「悪の顕われたる者は禍い浅くして、隠れたる者は禍い深し」(洪自誠「菜根譚」)、そして短篇の表題が仏教用語にあるように、対象とする犯罪は深山幽谷を思わす深い闇の中にある。
「よく聞き、よく見ろ。捜査はそれに尽きるんだ。どんなときでも耳と目をよく使え。頭は放っておいても耳と目についてくる」――由起谷志郎主任が元上司に教えられた捜査の基本。「機龍警察」の登場人物の過去や至る過程にもふれている。ハードボイルド警察小説。