
衣笠幸夫(人気作家の津村啓)は、冷めた関係になっていた妻・夏子を突然のバス事故で失う。同じ事故で亡くなった友人には、夫(大宮陽一)と真平、灯の3人の家族がいる。悲しみを露わにする陽一家族と、涙を流すことができなかった幸夫の交流が始まる。悲しみ、喪失、狼狽、悔恨、自責、葛藤、愛別離苦、憎愛、屈折、孤独・・・・・・。
「人は後悔する生き物だということを、頭の芯から理解しているはずなのに、最も身近な人間に誠意を欠いてしまうのは、どういうわけなのだろう」「愛するべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくはない。・・・・・・喪失の克服はしかし、多忙さや、笑いのうちには決して完遂されない。これからも俺の人生は、ずっと君への悔恨と背徳の念に支配され続けるだろう」「あのひとが居るから、くじけるわけにはいかんのだ、と思える"あの人"が誰にとっても必要だ。想うことの出来る存在が。・・・・・・人生は、他者だ。・・・・・・遅いか、あー」
本文の「長い言い訳」が、「永い言い訳」の題に変わっているがゆえに、永遠の人生的、哲学的な問いになっている。"言い訳"というより"問いかけ"、どこまでも続く「永い問いかけ」となって深みを増している。それが息の長い、丁寧な文章で書かれて、心に浸み込んでくる。