「その女アレックス」のピエール・ルメートルの作品。仏の権威ある文学賞・ゴンクール賞受賞作。
第一次世界大戦も終結間近の1918年11月、武勲を狙った仏軍のプラデル中尉は斥候に出した二人を背後から射殺し、仏軍の怒りをあおる。それに気付いたアルベールもプラデルに生き埋めにされるが、エドゥアールに救い出される。しかし、エドゥアールも砲弾の破片によって顔の半分を失ってしまう。
戦後、二人はプラデルの目が光るなか、人目を避けるようにパリで極貧の生活をする。そして二人は、全国の戦没者の記念碑を建て、遺族から金を集めるという架空の事業"国家をゆるがす詐欺"を企てる。一方、プラデルは戦没者の墓地建設で大儲けしようとする。物語はどんどん緊迫の度を増し、二転三転、急テンポで突き進む。
「アルベールは倫理の名のもとに、復讐を夢見ていた」「エドゥアールは違った。復讐では、彼の目ざす正義の理想は満たされない。(個人的な問題ではない)ひとりの人間に責任を負わせるのでは、彼は満足できなかった。国には平和が戻ったけれど、エドゥアールは戦争に対し宣戦布告をしていた」――。
戦争にある本質的な絶望と熱狂。それは戦後においても、戦死者追悼の熱狂や生還した兵士への冷淡、虚無となって打ち続くことが描かれる。