「いまこそ、自由主義、再興せよ」と副題にある。「信なき言論煙の如し」というが、激烈な時代のなかで信念を貫く。言論人の使命を貫く。屹立した人間のギリギリ、究極の姿がすっくと浮かぶ。
「石橋湛山全集」全16巻に収録されている膨大な論文のなかから70本を抜き出し、船橋さんがそれに加えて語る。湛山の思想と精神に迫る論文解題だが、「湛山を読む」であるとともに「湛山で時代を読む」ということだ。
論文は1914年の「断乎として自由主義の政策を執る可し」から、1947年の「私の公職追放に対する見解」に及ぶ。第一次世界大戦への日本の参戦、対華21か条要求、1920年代の世界の潮流と日本の民主主義の産みの苦しみの軌跡、金解禁論争、満州事変から日中戦争そして三国同盟、太平洋戦争へなだれ込む日本――そのなかで権力を監視し、ペンで信念を貫く石橋湛山の姿に、感ずること、考えることはあまりにも多い。