天正18年(1590年)、秀吉によって江戸に転封された家康の見たものは、低湿地の広がる江戸とそこに建つお粗末な江戸城だった。家康はそこで東京湾に注いでいた利根川を太平洋へと流す大工事に乗り出す。第一話はこの「流れを変える(利根川の東遷、荒川の西遷)」だ。これを命ぜられたのが伊奈忠次、それを継いだ伊奈忠治。第二話は「金貨を延べる(天正大判を駆遂し、貨幣を制する小判の貨幣鋳造、金座)」で後藤庄三郎。
第三話は「飲み水を引く(七井の池―井の頭から関口、水道橋へと立体交差する神田上水工事)」の内田六次郎、大久保主水藤五郎、春日与右衛門。第四話は「石垣を積む(江戸城の石垣)」の"見えすき吾平"と"見えすき喜三太"。そして大阪夏の陣。第五話は「天守を起こす(白色の江戸城天守閣への家康、秀忠の思考)(漆喰)」は家康が何を考えたかに迫っている。
「国土」「土木工学」に携わってきた者として、また東京に住んでいる者として、きわめて面白かった。