小学校4年生の6月、福岡県糸島の田舎に都会の団地から引っ越してきた山田加奈子。それはたった1年間の新しい生活だったが、姉や家族、いつも一緒の咲子などとともに"普通の日々"の全てをどんどん吸収していく。そこで出会った「死刑囚の母」のおハルさん。「残酷なところもいっぱいあるの。残酷な時代でしたからね。踏みつけてきたのよ、たくさんの命や、心を」「あなたには、残酷なできごとが起こりませんように」・・・・・・。それは初登校の日、田んぼの畦道でどんどん踏みつけられていく蛙の轢死体に気分が悪くなって保健室で介抱される加奈子が重なる。
森や田んぼ、豊かな自然のなかで過ごした濃密な1年。命や生老病死の近い所で、子どもの感受性が、より磨かれていく貴重な日々が描かれる。いい。