英「エコノミスト」誌が直近に執筆した、「通貨」に関する記事を集めて一冊に編んだもの。複雑化する世界経済を見通す鍵として「通貨」の角度から分析したものだ。
焦点は何といっても米国、ドル。次いで元だ。「この70年間、世界の金融・通貨システムに君臨してきた基軸通貨、ドルだが、その力を支えてきた米国の経済力は弱体化し、この覇権のぐらつきによって世界経済は急激に不安定化している」「米国はIMF、世界銀行、WTOといったグローバルな経済的枠組みに責任を果たさないようになっている。その原因は、国内の中流層の没落とリンクした国内政治での左右両極のポピュリストの台頭にある」「急速に拡大している米国外のドル資産、オフショアドルの世界。このドル資産をもとに米国以外の国は経済を運営しているが、そこには危機の際に国家や金融機関を救う『最後の貸し手』がいない」「世界各地に着々と人民元取引のネットワークを築いている中国だが、それは中国国内の完全自由化とトレードオフであり、習近平のジレンマだ」「通貨の未来――ビットコインとサイバー上におかれる改竄できない公開台帳『ブロックチェーン』の技術は、為替リスクのない信頼できる究極の基軸通貨にすることができるのか」・・・・・・。
米経済や中国の政治・経済をイギリスからの視点で語り、円についても「マイナス金利」「アベノミクス」について述べている。米国の「金利上げ」をとってみても、世界の経済全体がリンクして激震の波が伝播していることが実感させられる。