川越にある昔ながらの活版印刷「三日月堂」に弓子が数年ぶりに戻る。川越運送店一番街営業所長の市倉ハルは息子・森太郎を北海道大学に送り出す。一番街のはずれで「桐一葉」(高浜虚子の「桐一葉日当りながら落ちにけり」)という珈琲店を経営する岡野。川越にある私立高校の国語教師・遠田と文芸部の村崎小枝、山口侑加。遠田と桐林泉。そして婚約する友明と雪乃。こうした登場人物はいずれも心の底に悩みをかかえながらもいい関係を結ぶ。
味わいのある活版印刷が1人1人を結び、互いの誤解を解き、生老病死の悲しみと温かい人間関係のなかで、「自分自身に生きる」喜びを見つけていくことになる。じっくりと生きる意味を問いかけていく。感動作。