「霧の城」「満月の城」「湖上の城」の三編――。いずれも戦国の世を城を守るために仁王立ちして戦う女城主の姿、大事なものを守り抜く姿を描いている。
信長に逆らった女――岩村城主・遠山左衛門尉景任に嫁ぎ、後に飯田城主の秋山虎繁と夫婦として共に戦う珠子。戦乱に翻弄され、織田信長に振り回された珠子が、決然と自らの意志で立つ。「この霧が晴れた時には、織田勢も戦の世も消え失せていればいい」・・・・・・。
「満月の城」は、加賀、越中、能登を舞台に、畠山義綱の側室であった佐代が、上杉謙信、織田信長の狭間でわが子・義隆を守り毅然と立つ。
そして「湖上の城」。2017年のNHK大河ドラマ「おんな城主・直虎」の奈美(次郎法師直虎)。奈美は井伊家22代直盛の長女として天文3年(1534)に生まれた。直盛の従弟直親(亀之丞)を婿に迎えて家を継ぐはずであったが、直満(父)、直親らが今川義元から謀叛の疑いありとされ、直親は信州に身を隠す。奈美は髪を下ろす。井伊領を狙う武田、今川、徳川の攻めぎ合い。井伊家の男たちが次々死ぬなかで、直親の嫡男・虎松の後見人として奈美は還俗。次郎法師直虎として男として生きる姿を描く。