プリズンブッククラブ.jpg「わたしは、老眼鏡をはずし、フランクの日記帳を脇のテーブルに置いた。この世界には、なんとさまざまな囚われびとがいることだろう。監獄の囚人、宗教の囚人、暴力の囚人。かつての私のような恐怖の囚人もいる。ただし、読書会への参加を重ねるたびに、その恐怖からも徐々に解放されてきた」――。

副題に「コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年」とあるが、2011年から12年にかけて、2か所の刑務所読書会を友人のキャロル・フィンレイに誘われて務めたアン・ウォームズリーが、受刑者の生の声を交えて、小説風にまとめたもの。トロント在住。イギリスで強盗に襲われ命を落としかけたという傷が常に心奥にある。

選ばれた本はかなり深く、生々しい現実と格闘するものが多い。「ガーンジー島の読書会」「怒りの葡萄」「またの名をグレイス」「ユダヤ人を救った動物園」「第三帝国の愛人」「サラエボのチェリスト」・・・・・・。欧米社会に沈潜する戦争、分断、差別、虐待、銃、暴力、テロ。脅威、迫害、強迫観念。宗教や人種の対立・・・・・・。日本の自然、人間との融和社会との差異はあるが、世界共通の人間社会の亀裂を、受刑者たちが読書を通じて考え、重い口を開いていく。人生のギリギリを生きている人たちだけに、切実な思いとリアリズムが詰まっていると感ずる。

「うしろを振り向かず、将来のことも考えない。とにかく今日一日を生きなさい」「人生がちょっとばかりつらくても、おれたちは日々の暮らしを続けるだけだ」――。希望を捨て去って、絶望のなかに生を見る。読書に選ばれた最近の本を読んでないのに悔しい思いがした。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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