51mNPlzrREL._SX338_BO1,204,203,200_.jpg「されどわれらが日々――」(1964年第51回芥川賞)は、我々世代にとって忘れられない青春時代の著作。それから50年余、柴田翔氏にとって30年ぶりの注目の長編だ。主人公の加見直行は、少年期に終戦を迎え、激動の戦後をひたすら生き、安保闘争等の過激革命家に声をかけられ南米で数年を過ごし、政治闘争のなかで帰国。結婚、多くの人との出会い、妻の死、そして70代となって人生の総括のなかで、過去が蘇る。

人は激動する時代のなかで生きる。人生はいろいろな出来事に遭遇する。さまざまな出会いがある。因があり縁があり果がある。衝撃の事件も絶望もある。しかし、70代を越え、身辺の整理を始めてみると、それらがある折り合いをみせて静かに定置する。人生に真摯に立ち向かった人に築かれる境地だろう。その境地は、生老病死の生命観と宇宙観に通じる。宇宙から、死者から届く信号に気づくのだ。「文化も歴史も、死者たちと生者たちの思いの感応がなければ生まれない・・・・・・。永遠無量の時空の片隅の片隅で、死者と生者の思いが重なって、そこから初めて文化や歴史が生まれてくる」「人間の歴史も、先行した死者たちとそれを慕う生者たちとの信号のやりとりから生まれてくる」・・・・・・。加見直行の生涯は、同時代を生きてきた我々自身の人生を思い考えるとともに、「人生とは」という命題を考えさせてくれる。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

太田あきひろホームページへ

カテゴリ一覧

最新記事一覧

月別アーカイブ

上へ