日本の敗色が濃くなっていった1943年夏――北の最果て、アリューシャン列島西部にある鳴神島=キスカ島で、孤立状態にあった日本兵5200名が奇跡的に無血で救出された。しかもその直前、隣の島・熱田島=アッツ島では日本軍は全滅、玉砕していた。
人の命は一度失ったら取り返せない。命の尊さ、戦時下における指導者のゆるぎなき人道の魂の重要さ。その無血の大救出劇は、「一億玉砕、一億総特攻、人命を軽んじ野蛮で好戦的で、狂信的な危険きわまりない日本人」という米国の見方を大きく変えることにもなった。海軍少将・木村昌福、陸軍中将・樋口季一郎、気象専門士官・橋本恭一少尉、同盟通信社の菊池雄介、そして日本人観を覆した米軍諜報部員・ロナルド・リーン(ドナルド・キーン)・・・・・・。「この小説は史実に基づく 登場人物は全員実在する(一部仮名を含む)」と書かれている。重い感動作。