ピアニストだって冒険する  中村紘子著.jpg昨年亡くなった世界的なピアニスト・中村紘子さんの直前まで書かれたエッセイ。まさに世界を舞台にした交遊の広さ、文化芸術の深さ、文明や社会への確かな視座、鋭いうえにナチュラルな人間洞察・・・・・・。同世代だが、きわめてドメスティックな自分には異次元の世界に感嘆する。

「音楽の演奏にとって大切なことは、ブレスをとることです。声楽家は肺でとるけれど、ピアニストは手首で呼吸しなければなりません」「時代も、知性と教養を重んじていた世代から、経済優先の価値観に変わりつつあるようにも思えるが、クラシック音楽の世界ではどうだろうか」「名演に飽きた時代への嘆き(ラン・ランの演奏にはそもそも様式や伝統というものを越えた個性と超絶技巧があり・・・・・・音楽のかたちをゆがめてしかもそれが大衆に受けているのを見ると、なんだかピアノを弾くのが虚しくなってくる)」「音楽のちから」「どうも近年、クラシック音楽をはじめとする、いわゆる人間の『成熟度』を必要とする分野に携わる人々の存在感が希薄になってきたように思う。世の中は、政治・経済、そしてスポーツが中心に廻り、芸術文化、特にクラシックはほんのお義理にお飾りのように隅っこの方に参加させて頂いているといった印象だ・・・・・・もてはやされているのは軽チャーであり、未成熟な子供っぽい思考である」「願わくば、文化芸術の偉大さを知り、尊敬に価する優れた知性と豊かな心をもつ政治家こそが、日本の未来を作り上げる中心となって欲しい」「プライドと国家の品格」「大人になりたくない(未成熟を売物とする日本)」・・・・・・。

「ピアニストの冒険は手で始まる」――ピアノ以外で手を使うことのすべては危険な冒険につながり、小中学校で「体育の授業はほとんど見学だった」という中村紘子さん。世界を舞台に真っすぐに走り抜いた人生の境地が率直に語られる。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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