多情な"浮かれ女"の真の顔とは――。年々歳々、季節が移りゆくように、式部は人生のその時々で恋をした。時には奔放に、時には命がけで・・・・・・心ならずも怒濤にまきこまれてしまったこともあったはずだ。その波乱に満ちた人生とは・・・・・・。
「冥きより冥き道にぞ入りぬべき 遥かに照らせ山の端の月」(和泉式部)
「この世をば我が世とぞおもふ望月の 欠けたることもなしとおもへば」(藤原道長)
「大江山いくのの道の遠ければ まだふみもみずあまのはしだて」(小式部内侍)
1000年代初頭、"恋多き女""浮かれ女"といわれながら、次々と秀歌を生み出す当代きっての女流歌人・和泉式部。常に恋の噂が絶えず、揶揄や悪口や悪評にまみれた式部。それは、権勢をほしいままにする藤原道長らの強引な策略に翻弄された姿でもあった。和泉守・橘道貞との夫婦を切り離され、心を奪われた帥宮、道命、弾正宮とも死別・離別。そして、壺井大将、鬼笛大将。心の支えとなった太皇太后彰子や藤原行成。娘・小式部内侍をはじめ、大切な人が次々に喪っていく。和泉式部はその寂しさ、苦しさ、辛い時に歌を詠み、歌が人生を救った。新しい角度で和泉式部に踏み込んだ力作。