激変する社会のなかで変化を迫られる出版業界。しかし、編集作業、編集する頭脳は人間のなかでも根源的ともいえる最重要のものだ――。「自分は何のために編集者になったのか」「昨今の出版業界の移り変わりを前に『このまま何もせずにいていいのだろうか』『現在この業界に本当に必要な存在とは何か』との問い」「思考を続ける人間には、真贋を見極める目が備わっている。本物を、上質を選ぶ慧眼を身につけることが、情報の波にさらわれない唯一の対抗策だ。思考の源は言語だ。言葉を探し、文化を育み続けることこそ、出版人の使命だ」――。
読者の活字離れ、激震の出版業界のなかで生き抜くことを迫られる雑誌の編集長・速水輝也。軽妙な会話、人を惹きつける力、心を通わせての信頼の獲得、好感度抜群、やり手の速水は、懸命に雑誌を守ろうと奔走する。しかし、社内の軋轢も加わって社を去ってゆくことになる。
しかし、やられっ放しと思いきや大逆転が待っていた。はたして速水の本性はどこにあり、その牙ともいえる執念は何によって築かれてきたのか。情報社会の急進展、変化を余儀なくされ、もがく出版業界のなかで、出版や編集の意味や人間の文化を問いかける。そのなか人間の泥臭さを交えて描く傑作。大泉洋を写真で使い、小説に映像を組み込んだ新しい試みまである。