2020東京オリンピック・パラリンピックまで1000日を切った。パラリンピックの意義は限りなく大きく、未来に向けて意識を変える大きなチャンスでもある。これこそが、最大のレガシーと言えるかも知れない。本書は、早稲田大学の全学共通プログラムとして、2015年度から「パラリンピック概論」を開講、その講義を中心に編んだもの。生きいきとした内容が伝わってくる。
「失われたものを数えるな、残されたものを最大限に生かせ」――。「パラリンピックの父」と呼ばれるルートヴィヒ・グットマン博士の言葉だ。ロンドン郊外のストーク・マンデビル病院でスポーツを通じて生きる喜びや希望や可能性を伝えた博士の言葉で、1948年のストーク・マンデビル大会がパラリンピックの原点となる。
第1回大会は1960年ローマ大会、パラリンピックの名称は1964年東京オリンピックからだ。そして「リハビリの大会」から「競技の大会」へと進展し、2012年ロンドンパラリンピックでは20競技503種目と拡大する。ロンドンオリンピックは26競技302種目で、パラリンピックの競技種目の方が多い。障がいの程度に応じた種目となっているためで、男子100mという種目は13個、車イスバスケットボールでも4クラスある。
課題は山ほどある。「パラリンピックの環境整備」「ボランティアを含めた人、そして物と資金」「注目度を高めるためのメディアの活用」「キメ細かなインフラの整備」「選手の声を聞いて対応する力とスピード(限界は伸びる)」「スポンサー企業を増加させる取り組み」「障がい者が頑張っているのではなく、スポーツに打ち込むアスリートという意識変革(パラリンピックはチャンス)」・・・・・・。
2020年に向けて①スポーツ・健康②街づくり・持続可能性③文化・教育④経済・テクノロジー⑤復興・オールジャパン・世界への発信――。これが5本柱だが、まさに「スポーツには世界と未来を変える力がある」。パラリンピックはチャンスだ。パラリンピックの魅力と凄さを知ることは、心のバリアフリー、共生社会の実現に大きくつながっていく。