桶狭間から大坂の陣までの戦国の世――。織田信長、上杉謙信、明智光秀、大谷吉継、小早川秀秋、豊臣秀頼の6人を描く。「決戦!関ヶ原」などの決戦シリーズで冲方丁氏が挑んだものだが、時系列に並べてみると、より人物が浮き上がってくる。「世は、秀頼が望んだ騒がしさを失い、かつてどの武将達も大義名分とした、全国静謐の泰平へと移り変わっていった。織田・豊臣が直面した戦なき世が訪れ、そこでは上杉が磨いた兵法も机上のものに過ぎなくなった。明智のような主君殺しは忌み嫌われ、五畿七道を、八道、九道とせんとする野心は誰の心からも消え去った。・・・・・・下克上の世が残したおびただしい道を通るのは、兵ではなく、人と物、銭と思想であった」――。
「人間、五十年・・・・・・。六欲天の魔王。人心掌握の神算鬼謀」「炯眼の持ち主(虎視の眼)」「我、鬼札として天下を取れり」「人望厚く、中庸をなし、国を富み栄えさせること能う逸材(家康の吉継評)」「秀吉と豊臣家と文官に対する深い失望(吉継がはなから信じていなかった秀秋の心中)」「神生(な)りて下克上巳む」――。いずれも途方もない能力をもち、人心掌握に長け、宿命的立場に立たされた者の激烈な人生とその勝負の決断。異常な戦国の事態が異能の"神がかる人"を"神そのもの"と押し上げる姿が描かれる。