昆虫学者・前野ウルド浩太郎さんは「バッタ博士」。「バッタに喰われにアフリカへ」が本心だというのだから凄まじい。人類を救うため、自身の夢を叶えるために単身サハラ砂漠、モーリタニアに乗り込んで、研究というより格闘する。
バッタは漢字で「飛蝗」と書き、虫の皇帝と称される。研究対象はサバクトビバッタ。アフリカの半砂漠地帯に生息し、ひとたび大発生すると、数億匹が群れ、天地を覆いつくし、農作物をはじめ緑という緑を食い尽くす。「蝗害」という。大災害を起こす天災だが、本気で大群のいる所に飛び込んでいった研究者はいなかった。
「狂ったように飛びかうバッタと、狂ったように走り回る私」「さあ、むさぼり喰うがよい」というように、データを探りまくり、「飛蝗」からアフリカを救うことに命を懸ける。「ラマダンの断食」をすると「明らかに幸せのハードルが下がり、些細なことにでも幸せを感じる体質になる」というように、猛然たるエネルギーとともに感謝の心があふれている。バッタとの死闘が"喜悦はかりなし"というのだからすごい。恐るべき体験談の書。